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  ミルクしか与えないことから生じる貧血状態が

  幸いして、筋肉組織には色素形成力が

  欠如するために、

  屠体にしても黒ずむことがない。

  ミルクには鉄分が入っていないから、

  したがってそれは、望ましい最終製品を

  与えてくれる唯一の飼料原料なのである。

    

 ほかの餌を避けなければならないのは、

 それらに鉄分が含まれているからにほかならない。

 わけても、微量無機物の食塩や乾草や敷きワラなど

 は鉄分の給源になるので避けねばならない。

 穀類もまた、給餌プログラムにあってはならない。

 生理学的見地からいって、

 このようなかたちの栄養プログラムでいくと、

 動物に著しいストレス反応を起こさせることになる。

 10週齢に近づくにつれて、それは特にひどくなる。


  …子ウシは生まれたときに体内に鉄分の蓄えを

  もっている。つまり、はじめは血液中の余分な

  ヘモグロビンというかたちでもっているし、

  肝臓や脾臓や骨髄のなかにも、

  血液中ほどではないにしろ、余分の蓄えがある。

  だから、8−10週齢までの間はずっと、

  かなり平気な顔ですごすことができる。

  しかしながらこのころになると子ウシは貧血になる。


 そして肥育期間が日1日と長くなるにつれて、

 エネルギーの利用度、病気にたいする抵抗力、

 成長率などがことごとく低下し、

 結局は死ぬのである。

      ―S・N・ゴーント、R・H・ハリントン共編             『ヴィール・カーフの飼育』


      

 

 

産まれてすぐに母親から引き離され、母親の乳を吸うことも、ぬくもりを感じることも許されず、

1日中、くる日もくる日も真っ暗なしきりの中で、身動きすらままならず、

太陽の光すら浴びることもできず、孤独とストレスと、極度の貧血と毎日戦い、

ただただ、屠殺されるその日を待つ。

私が見たビデオでは、彼らは貧血でつらそうに、倒れながら屠殺場へと歩いて行きました。

私たちは子牛を食べなくとも生きてゆけます。

さらなる美味しいものを求める人間の欲望のために、

彼らはこのような苛酷な悲しい一生を送らなければならないのでしょうか。

私たち人間は、彼らをここまで苦しめる権利を持つのでしょうか。

 

 

 

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